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AIで深堀!Wi-Fiが突然切れる原因は"レーダー"かも? DFSの仕組みと対策を実測の視点で解説

「社内のWi-Fiが、決まったエリアだけ時々ブツッと切れる」「Web会議が一瞬固まって復帰する」——機器の故障でも、電波の混雑でもないのに起きるこの症状、原因はレーダーかもしれません。

5GHz帯のWi-Fiは、気象レーダーなどと同じ周波数を"間借り"して使っています。レーダー波を検出するとWi-Fi側が自動的にチャネルを譲る仕組みが DFS(Dynamic Frequency Selection:動的周波数選択) で、これが作動した瞬間、そのアクセスポイント(AP)配下の通信は一時的に途切れます。

本記事では、DFSの仕組みから「レーダーをつかみやすい場所・つかみにくい場所」、設置とチャネル設計による対策、そしてスペクトラムアナライザを使った原因切り分けの方法まで、法人ネットワークの実務目線でまとめます。


1. DFSとは何か——5GHz帯は「レーダーが先住民」

5GHz帯はもともと無線LAN専用の帯域ではありません。総務省の周波数割当を見ると、5250〜5372.5MHzは公共機関等の気象レーダー、5350〜5850MHzは各種レーダーが使用しており、Wi-Fiはこれらの一次利用者に干渉を与えないことを条件に共用を認められています[1][2]。国内の5GHz帯気象レーダーは気象庁・国土交通省・電力会社等が運用しており、約60局に免許が付与されています[3]。

そこで電波法令上、レーダーと帯域が重なるチャネルを使う無線LAN機器には、レーダー波を検出したら自動的にそのチャネルを明け渡す機能=DFS(あわせて送信電力を制御するTPC)の搭載が義務付けられています[4]。DFSはユーザーが無効化できない、法令由来の挙動です。つまり「DFSで切れる」は故障ではなく仕様であり、対策は"止める"ことではなく"うまく付き合う"ことになります。


2. 日本の5GHz帯チャネル構成——20chのうち16chがDFS対象

日本の5GHz帯はW52・W53・W56の3つに区分されます。


日本のDFS帯域
日本のDFS帯域

区分

周波数

チャネル

DFS

屋外利用

W52

5150〜5250MHz

36/40/44/48(4ch)

不要

原則屋内(2018年6月から条件付きで屋外可※)

W53

5250〜5350MHz

52〜64(4ch)

必須

屋内限定

W56

5470〜5730MHz

100〜144(12ch)

必須

屋内・屋外とも可

※W52の屋外利用にはAP側の登録等の手続きが必要で、モバイルルーターやテザリングは対象外です[5]。なお、W56は2019年7月にch144が追加され上限が5730MHzに拡張、5GHz帯は計20チャネルになりました[6][7]。

ここで押さえたいのは、20チャネル中16チャネル(W53+W56)がDFS対象だということです。DFSを完全に避けようとするとW52の4チャネルしか残らず、複数APを並べる企業環境ではチャネルの再利用間隔が詰まり、今度はAP同士の干渉で速度が落ちます。「DFSチャネルをどう安全に使うか」が、法人Wi-Fi設計の重要テーマになる理由です。


3. DFSの動作——「60秒の沈黙」と「30分の出入り禁止」

DFSチャネルを使うAPの動きは、次の流れになります。

DFSのフロー
DFSのフロー
  1. CAC(Channel Availability Check):APはDFSチャネルで電波を出す前に、まず60秒間(1分間)「黙って」レーダー波の有無を確認します[4][8]。AP起動直後やチャネル移動直後に5GHzのSSIDがしばらく見えないのは、この待ち時間です。

  2. 運用中の常時監視:通信を始めた後もレーダー監視は続きます。

  3. 検出と退避:レーダー波を検出すると電波の発射を止め、別チャネルへ移動します。検出したチャネルは30分間使用禁止(ノンオキュパンシー期間)です[8][9]。移動先がまたDFSチャネルなら、再び60秒のCACからやり直しになります。

この間、接続していたPCやスマートフォンは一時切断され、再接続まで数秒〜数十秒かかります。Webブラウジングなら気づかない程度でも、Web会議・VoIP・VDIのようなリアルタイム通信では確実に「切れた」と体感される断時間です。

もうひとつ実務上厄介なのが誤検出です。レーダー判定はパルスパターンの照合で行われるため、他の電波ノイズをレーダーと誤認してチャネル退避してしまうケースがあります。逆に、近年の固体素子レーダーは従来型より検出されにくい場合があることも、総務省の共用検討で課題として議論されています[2]。つまりAPのログに「Radar detected」と出ていても、それが本物のレーダーかどうかはログだけでは分からない——後述する実測が効くのはこの部分です。


4. レーダーを「つかみやすい場所・つかみにくい場所」

レーダー波が届くかどうかは、ほぼ見通し(Line of Sight)と遮蔽で決まります。レーダーは高所から水平方向に強い電波を発射するため、見通しがあれば数十km離れていても、DFSの検出しきい値(−64dBm)[2]を超えるレベルで届くことがあります。

つかみやすい位置・つかみにくい位置
つかみやすい位置・つかみにくい位置
  • 気象台・レーダーサイト・空港の周辺(見通しがあれば数十km圏でも)

  • 河川流域(国土交通省のレーダ雨量計が5GHz帯を使用)[3]

  • 高台、ビルの上層階、海沿いや郊外など視界の開けた場所

  • 建物内ではレーダー方向に面した窓際。ガラスの電波減衰は小さく、壁のような盾にはなりません

  • 屋外設置のAP(W56が前提になるため、遮るものがなく最もリスクが高いカテゴリ)

つかみにくいロケーションはその逆で、地下、窓のない部屋、フロア中央のコア寄り、周囲を高い建物に囲まれた低層階、山陰などです。コンクリート壁は1枚で十数dB級の減衰があり、数枚挟めばレーダーパルスは検出しきい値を下回っていきます。

ただし注意点が2つあります。第一に、金属面や隣接ビルでの反射波による突発的な検出はあり得ること。第二に、「つかみにくい=ゼロ」ではないこと。年に数回でも、それが役員会議の最中なら大問題です。だからこそ「経験則」ではなく、実測で確認する価値があります。


5. 防御方法——設置位置とチャネル設計でリスクを管理する

DFSは無効化できないので、対策は「検出される機会を減らす」「検出されても被害を小さくする」の二本立てです。

設置位置の工夫

  • DFSチャネルを使うAPは窓際を避け、フロア中央寄りの天井に設置する

  • レーダー方向(気象台や空港の方角は地図で特定できます)に面した窓際のAPにはW52を割り当て、室内奥のAPにDFSチャネルを回す非対称チャネルプランを組む

  • 指向性アンテナを使えるAPは、放射面を屋内側に向ける

チャネル設計・運用の工夫

  • 検出実績のあるチャネルをプランから除外する。なお欧州規格(ETSI EN 301 893)では5600〜5650MHz(ch120〜128)が気象レーダー保護のためCAC10分という特別扱いになっており、海外でも「当たりやすい帯域」として知られています

  • 切断が致命的なエリア(会議室・受付・コールセンター等)はW52固定にし、DFSチャネルは執務エリアの容量確保に使う

  • 対応APならZero-wait DFS(予備の無線でCACを先回りして済ませ、退避時の60秒待ちをなくす機能)を有効にする

  • 802.11k/v/rを整備し、チャネル移動時のクライアント再接続を高速化する

  • APコントローラのDFSイベントログを定期集計し、「どのAPが・どのチャネルで・何時に」検出しているかを平面図に落とす。方角や時間帯の傾向から、実レーダーか誤検出かの当たりがつきます

  • 根本対策としては、対応端末が揃う環境なら6GHz帯(Wi-Fi 6E/7)への移行も選択肢です。6GHz帯にはレーダーとの共用がなく、DFSは不要です


6. スペクトラムアナライザによる計測——「本物のレーダーか?」を見極める

最後に、DFS対策の精度を一段上げる実測の方法です。目的は2つあります。

  • (a) 事前サーベイ:設置候補点にレーダー波が実際に届いているかを確認し、設置位置とチャネルプランの根拠にする

  • (b) 切り分け:DFSイベント多発時に、それが実レーダーか機器の誤検出かを判定する

実際、スペクトラムアナライザでAPの電波を観測しながら疑似レーダー波を送信すると、APが即座に送信を停止しチャネルを移動する様子が確認できます[9]。同じことを現場でやればよいわけです。手順は次のとおりです。

  1. 測定点の選定:レーダー方向の窓際/フロア中央/反対側の3点が最小セット。設置位置の比較が目的なら、候補となる天井位置の直下で測ります。

  2. 帯域設定:W53(5250〜5350MHz)とW56(5470〜5730MHz)を対象に。疑わしいチャネルが特定済みなら、そのチャネル周辺に絞るとスイープが速くなり捕捉率が上がります。

  3. 表示設定Max Hold(最大値保持)とウォーターフォール表示を併用します。レーダーパルスは一瞬なので、リアルタイム波形だけでは見逃します。「いつの間にか立っているスパイク」をMax Holdに残させるのがコツです。

  4. 長時間記録:最低でも業務時間帯をまたいで数時間、できれば24時間以上セッションを記録します。レーダーパルスは非常に短く、1回の掃引で捕まえられる確率は高くないため、観測時間の長さで捕捉率を稼ぐのが正攻法です。

  5. 波形の見分け方:レーダーは「ごく短いパルスが、アンテナの回転周期に合わせて規則的に現れる」のが特徴です。ウォーターフォール上では同じ周波数に等間隔で並ぶ点列として見えます。チャネル幅いっぱいに広がる面状のWi-Fi、帯域中に散らばるBluetoothとは、パターンで区別できます。

  6. APログとの突合:APが記録したDFSイベントの時刻と、スペアナ記録の同時刻を照合します。スペアナに何も映っていないのに退避していれば誤検出が濃厚で、ファームウェア更新やベンダー問い合わせの根拠になります。実パルスが映っていれば、そのチャネルは素直にプランから外します。

  7. 測定時の注意:自局のWi-Fiが測定帯域で電波を出しているとパルスが埋もれるため、対象チャネルのAPは測定中だけ停止するか別チャネルへ退避させます。窓際と室内奥でのパルス受信レベル差が取れれば、それがそのまま設置設計の根拠になります。

なお、切り分けの結果「レーダーではない実在の干渉源」が見つかった場合は、波形を範囲選択してDevice Finder機能を使えば、受信レベルの変化を頼りに発生源の物理的な位置を追い込むこともできます。

Chanalyzer with Report Builder
Chanalyzer with Report Builder

こうした観測には、PCにUSB接続して使えるコンパクトなスペクトラムアナライザが便利です。当店で取り扱っている MetaGeek Wi-Spy + Chanalyzer(【wi-t.com該当商品ページへリンク】)はウォーターフォール表示と長時間記録に対応しており、上記の手順をそのまま実践できます。干渉源の自動分類まで踏み込みたい場合は AirMagnet Spectrum XT(【wi-t.com該当商品ページへリンク】)のようなプロ向けツールが選択肢になります。機種選定に迷われた際は、用途をお聞かせいただければ最適な構成をご提案します(【お問い合わせページへリンク】)。

まとめ

  • 5GHz帯のW53・W56(20chのうち16ch)は気象レーダー等と共用しており、DFSによる突然のチャネル退避=瞬断が仕様として起こり得る

  • 動作の要点は「開始前60秒のCAC」「検出チャネルは30分間使用禁止」の2つ

  • レーダー波の到達は見通しと遮蔽で決まる。窓際・上層階・屋外はつかみやすく、室内奥・低層階はつかみにくい

  • 対策は、設置位置の工夫+非対称チャネルプラン+Zero-wait DFS等の機能活用。重要エリアはW52固定が定石

  • 「本物のレーダーか、誤検出か」はスペクトラムアナライザの長時間観測とAPログの突合で切り分けられる

「Wi-Fiがたまに切れる」を放置せず、原因を可視化するところから始めてみてください。

出典・参考資料

  1. 総務省 電波利用ホームページ「我が国の電波の使用状況(周波数割当て)」 https://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/freq/search/myuse/index.htm

  2. 総務省 情報通信審議会 陸上無線通信委員会 5GHz帯無線LAN作業班「各周波数帯ごとの周波数共用検討結果」 https://www.soumu.go.jp/main_content/000417003.pdf (DFS検出しきい値−64dBm、固体素子レーダーとの共用検討)

  3. 総務省「5GHz帯気象レーダーに関する国内外の現状」 https://www.soumu.go.jp/main_content/000521742.pdf (気象庁・国交省・電力会社等が約60局を運用)

  4. 総務省 電波利用ホームページ「無線LANの屋外利用について」 https://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/others/wlan_outdoor/index.htm (W52/W53/W56の利用条件、DFS/TPCの義務)

  5. INTERNET Watch「無線LANの5.2GHz帯(W52)、屋外利用を可能に、電波法施行規則を改正へ」(2018年) https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/1122349.html

  6. 総務省「無線LANにおける5.6GHz帯周波数の上空利用に関する調査検討報告書」(令和3年) https://www.soumu.go.jp/main_content/000746100.pdf (2019年7月のch144解放、W56上限5730MHzへの拡張)

  7. JEITA「5GHz帯および6GHz帯無線LANに関するガイドライン」(2023年) https://home.jeita.or.jp/pc_tablet/files/5ghz6ghzwifi-lan.pdf (J52→W52移行の経緯、計20チャネル構成)

  8. 一般社団法人 無線LANビジネス推進連絡会(Wi-Biz)「Wi-Biz通信 Vol.41」 https://www.wlan-business.org/archives/20341 (CAC1分間、検出後30分間の利用制限、DFS/TPC要件)

  9. マイクロニクス株式会社 技術資料「Wi-Fiはレーダー波を検知すると止まるのか(三井情報・日経BP ITpro検証)」 https://micronix-jp.com/file-download/application/mki_170621.pdf (疑似レーダーによるDFS動作・30分間使用禁止の実測検証)

※法令・告示の内容は改正される場合があります。最新の正確な情報は総務省電波利用ホームページをご確認ください。

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